ポケモンGOなおっちゃん
家の近所に大きな川があり、その川沿いは春になると桜並木がとてもきれいなところで、普段は散歩やランニングコースとしても多くの人が利用している。
出勤時は電車で川を渡っているが、会社帰りには一つ手前の駅から歩いてその川にかかる橋を渡り帰宅している。
昨日もその橋を渡っているとスマホが鳴った。
橋の歩道の幅は大人2人分だが、橋の途中に川側に少し広くなったスペースがあるのでそちらに寄ってメールを確認すると、仕事のメールだった。
少し長めの内容だったのと返信する内容も考えていたので、しばらくそこに立ち止まっていたら、おっちゃんに声を掛けられた。
「あっちにカビゴンいましたよ。」
一瞬キョトンとしたが、すぐにポケモンGOだと分かった。
これでもおれは国内リリースした日にダウンロードして4日間プレイした経験者だ。
(おっちゃん、まるで昔の自分を見てるようだよ)
おれはおっちゃんを傷つけないようにこう言った。
「違うんです。メールですw」
そうですかと、照れながら笑うおっちゃん。
おれは「一応、起こさないように気をつけますね★」と言って歩き出した、
おっちゃんはキョトンとしていた。
おっちゃんは絶対に"なに言ってんだコイツは" と思っていた。
おれには分かる。
なぜなら声を掛けられた直後のおれのキョトンのときがそういう気持ちだったから。
(おっちゃん、まるでさっきの自分を見てるようだよ)
でもなおっちゃん。おれはポケモントレーナーではなかったけれど、おっちゃんの[他のポケモントレーナーにカビゴンGET情報を教えてあげよう]と考えたその優しさを汲んで、あのキョトン顔を、あの”なに言ってんだコイツ”顔をすぐに抑え、しかもカビゴンへの思いやりを含んだコメントでおっちゃんのミスを水に流してやろうと思ったのに、おっちゃんはおれをそんな目で見るんだな。それはないぜおっちゃん。
歩き出してもまだ背中におっちゃんのキョトンとした視線を感じる気がしたので振り返ると、何事もなかったかのようにスマホに夢中だった。
深く考えずに言ったことが相手に狙ったと思われてしっかりすべった。そんな気分だった。
ポケモンを捕まえるのはいいけどな、捕まえたらちゃんと生態くらい勉強しやがれ!